スペアーエアーHEEDと水上不時着ヘリコプターからの脱出訓練

呼吸器があるからといって、水上不時着したヘリコプターから簡単に脱出することはできません。当然その為の訓練が必要です。

この訓練を始めたのは1962年英国海軍で、その10年後に米海軍では始めています。日本では1979年にSpare Air の導入が海上自衛隊で始まりました。脱出訓練はその直後から行われています。

海外では、この脱出訓練は、軍、沿岸警備隊等政府関係だけでなく、広く民間でも行われています。洋上石油基地など洋上建築物で働く人々にとっても大事な訓練です。事実、スペイン沖ででは作業員を運ぶヘリコプターが2機海上不時着し、74人が犠牲になった事故も報告されています。  自家用航空機をもっている個人もこの訓練を受ける人がいます。歌手のジミーバッフェトは、1994年にフロート付の自家用機の操縦中に波をかぶり遭難しましたが、この訓練を受けたおかげで、生還したと言うれています。

その為、民間の訓練学校も各地にできています。こういった民間訓練学校は、色々なコースを取り揃えているようです。まず、水中呼吸器なしで脱出する初歩の日帰りコースから、水中呼吸器を使い、数日かけて、さまざまな状況を想定したをとりそろえています。どのコースを取るかは様々ですが、一番大事なことは、緊急時にパニックになったとしても、訓練を受けている自分を信じて、適切な行動を決める2,3秒の時間をゲットすることだそうです。

Spare Air の 歴史

Spare Air は 米国カルフォルニア州ロスアンゼルスの南の町Huntington Beach でダイバーのLarry Williamson によって1980年頃発明されました。当初は、ダイバーが水中で、エアー切れになったり、ダイビング機材が不具合を起こした場合、水面までの呼吸を確保する為のバックアップ用に開発がスタートしましたが、米軍の要請で、ヘリコプターが水面不時着の時乗員のの緊急脱出する際の呼吸確保の目的も開発目的に加えられました。1982年には、ダイビング雑誌”スキンダイバー”にも紹介され、米軍のヘリコプター緊急脱出用呼吸器として採用され(MIL-H-85801)広く使用されるようになりました。

日本には、高圧ガス保安法の規制がある為、普及できませんでしたが、株式会社クローバーにより、その規制をクリアーしたものが1987年紹介されました。その後、ダイバーや、自衛隊、海上保安庁、警視庁等多方面で使用されています。

30年経過して、Spare Air の会社はSubmersible Systems, Incとして、発展し、数々のモデルを生産し、世界に販売されています。スペアーエアーを使用して、遭難したヘリコプターから脱出例は米軍だけでも数十名に達しています。

写真は、日本導入時のプロダイバーによる実証試験

YOUTUBE と Spare Air

YOUTUBE でSpare Air を検索するといろいろな投稿があります。ほとんどが海外バージョンで、日本国内ではそのままでは、再充填できないものですが、Spare Air がどんな商品かを知るには、とても参考になります。例を2,3紹介します。

この動画は、Spare Air をとても分かりやすく解説しています。https://www.youtube.com/watch?v=A8oy_dQNfMw&t=63s

この動画はSubmersible Systems, Incの展示会の動画です。創業者の娘さんで副社長のクリスティーン・ブバンさんが説明しています。

https://www.youtube.com/watch?v=c5SPaNF2onQ&t=56s

その他いろいろの観点からの動画がありますから、興味のある方はぜひご覧ください。

なお、日本で使用をお考えのかたは、このサイトのSpare Air /HEEDと高圧ガス保安法の項を参考にしてください。https://clover-corp.jp/spare-air-heed-%e3%81%a8%e9%ab%98%e5%9c%a7%e3%82%ac%e3%82%b9%e4%bf%9d%e5%ae%89%e6%b3%95/

スペアーエアーと映画

スペアーエアーは、数々の映画の小道具で使用されています。

1999年公開の米国映画ディープブルーでは、高知能を持つサメと対決する主人公が使用してました。

2000年公開の米国映画パーフェクトストームでは、海に墜落した救助ヘリコプターのパイロットが使用しました。

2005年公開の日本映画”亡国のイージス””では、敵に占拠されたイージス艦に再潜入する主人公が使用しました。

まだまだ探せば出てくると思います。

映像は、ディープブルーの一場面です。